ウサギノネドコ図鑑 2 ヒメジョウゴゴケ

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写真中央にある小さなこの「ヒメジョウゴゴケ」。「コケ」と名は付きますが苔ではございません。
ましてやコケにするなんてもってのほかです。
この物体は「地衣類」という一風かわった生き物たち。

それは一体なんなのかと端的に申しますと「菌と藻類の共生体」です。
「そんなもん見たこともない」とおっしゃるあなた。いえいえ、そんなことはないはずです。
湿っぽいコンクリートや街路樹などにこびりついている黄色や薄緑色のアレが地衣類です。

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ウサギノネドコの前の街路樹にもたくさん。

写真 2015-12-09 11 54 33地面に生えているものたち。黄色っぽいのがそれです。

「共生体」というだけあって、菌と藻類が2つで1つのカタチになって「地衣体」を構成しています。簡単に言えば菌糸で出来たスポンジの様な構造体の隙間に、藻類がつまっているようなイメージです。

見た目は地味ですがユニークなポイントがたくさんあります。
例えばクマムシ。地上最強とうたわれるある種のクマムシは「ウメノキゴケ」という地衣類に生息しています。
さらに、ウメノキゴケを含む幾つかの地衣類は大気汚染の指標にもなります。
というわけで誠に遺憾ながら、ダーティな街中ではクリーンな空気を好むウメノキゴケを見る機会はそうそうありません。
そして誰もが小中学校の頃理科の実験でお世話になったであろう「リトマス試験紙」。
水に濡れると赤くなったり青くなったりするご機嫌なあの紙片は、ある種の地衣類から取れる染料を染み込ませて作られています。

その他にも食べられるものもあれば、煎じ薬として利用する地域もあったり、時には好奇心旺盛な研究者にタバコにされたり。案外色々と利用されています。

さて、今回のメイン地衣類は「ヒメジョウゴゴケ」です。

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地衣類は地球上で2万種、日本で1000種程度がいるそうですがその中でも割と可愛らしい形をしているのがこの種で、パッと見でそれだとわかる特徴的な形状をしています。
口の狭い入れ物に液体などを入れる時に使うジョウゴ(=漏斗)にそっくりですね。このぴょっこり立っている「ジョウゴ」の部分はこの地衣体における「子柄(しへい)」という部分で、子孫を残すための器官です。基本的な葉にあたる部分はこのジョウゴの下にあるヒラヒラです。電波を捉えるパラボラアンテナのようにも見えますが特に何も受信していないようです。菌がこのような造形を作っていると考えると実に興味深いですね。
この種の地衣類は大気汚染には強いそうで、実際にウサギノネドコのお庭の所々にひっそり生えているのを見ることができます。

Exif_JPEG_PICTUREトタテグモの巣。
わかりにくいですがフタの裏側は糸で裏打ちしてあります。

余談ですがこちらはウサギノネドコ屈指の奥手系地下アイドル、
トタテグモの巣穴。ちょっとつつくと巣穴の蓋を内側から引っ張って開かないようにしちゃうもんで、まだその御姿を目にしたスタッフは居ないというなかなかの引っ込み思案ちゃんです。(最近はお留守な事が多いのでもしかしたら召されたのかもしれません)
ご来店された際はお気軽にスタッフに声をかけてくださいませ。お庭もご案内いたします。

ミセスタッフ
aoyama

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ウサギノネドコ図鑑 1 パイライト

Exif_JPEG_PICTURE和名:黄鉄鉱
英名:pyrite
産地:ペルー

これは現代美術家がつくったアートピースではなく、まぎれもない自然物。
パイライトは立方体の他に球体や多面体(十二面体)など様々な形で産出する鉱物です。
もちろん、数多ある鉱物の中でパイライトだけがこのように様々な形になるわけではないのですが、取り分けこのような見事な立方体として多産する鉱物はそう多くはありません。
どうしてこのような形になるのかということは、ムツカシイ話になるので割愛させていただきますが、
科学で切り込む以前に「美しい」。

なにがそんなに美しいのかというと、第一にこれが自然物であるという事実。
人間が何かの部品や造形物として作ったものならいざしらず、なにか目的があるわけでもなく、ただそこにあった元素にこのようになる性質があって、同時に周辺の環境が結晶の生成を許したためにこのような形になっただけで、そこには一切の意図がない。
まさしく「自然にできたもの」なのです。

アクリル封入した球体のパイライト。アクリル封入した球体のパイライト

次の美しさのポイントは「純粋さ」です。
基本的に結晶というものは、不純物が少ないほど、且つ形成される時間がゆっくりであるほど美しくなります。
鉱物にはそれぞれに独特の特徴がありますが、整った環境で時間がかかってできたものほど純粋で美しいものになり、その特徴も際立ちます。
ダイアモンドが大粒なほど、また透明度が高いほど高価なのは、その美しさが長い長い年月をかけて純粋に成長した証であり、そういった結晶は大変少なく貴重だからなのです。
パイライトにおいて「完璧な立方体」はほとんどないものの、はじめて見た人はその結晶の端正な形とそこにある純粋さに魅力を感じずにはいられないでしょう。

ちなみに形の違いは主に産地による環境の差で現れます。
立方体のものならスペイン、球体のものは中国、多面体はペルーなどが有名です。
形成される環境が違うだけでここまで様々な形になることにも驚きです。

水晶と共生しているパイライト。 産地はペルーのワンサラ鉱山。 水晶と共生しているパイライト
産地はペルーのワンサラ鉱山

比較的多産で安価なのでお財布に優しい上に見事なまでの造形美。
かつてはその色味から採掘した者が金と間違えたために「愚者の金」と呼ばれたこともあるようですが、
個人的にはさしずめ鉱石造形美部門で金賞でもいいくらいです。

光沢の強い結晶(十二面体)のクラスター。リッチな一品。光沢の強い結晶(十二面体)のクラスター。リッチな一品

ミセスタッフ
aoyama

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