「驚異の珪藻世界」出版のお知らせ

ウサギノネドコがブックデザインのディレクションを手がけた「驚異の珪藻世界」が、2020年12月15日(火)に創元社から出版されます。(Amazonで先行予約受付中)

「あなたが知らないウニの世界」を気に入ってくださった創元社の編集者の方に「珪藻の本を出版するのですが、ブックデザインをしてみませんか?」とお声がけいただきました。

大変光栄なご依頼ではあったのですが、書籍のデザインは本業ではありませんし、お受けするかどうかは正直迷いました。

しかし、見れば見るほど、知れば知るほどに珪藻の魅力に引き込まれ、「これこそがウサギノネドコが伝えるべき自然の造形美なのでは?」と思い至り、お受けすることにいたしました。

「珪藻?なにそれ?」と思う方にこそ是非本書を手に取っていただきたいと思っています。

まずは何よりも、その摩訶不思議で美しい自然の造形美をご覧ください!

これがすべて自然の造形美なんて、まさに驚異でしかありませんよね?世界中にはなんと10万種も生息しているとか。

珪藻は聞いたことがなくても、珪藻土はいかがでしょうか?珪藻土は実は珪藻の殻が長い時間をかけて積み重なった土。湿気を吸ってくれる正体は珪藻の殻なんです。

ものすごく身近などころか、その存在があなたの生命を支えていると言っても過言ではありません。

植物プランクトンである珪藻は光合成をし、なんと地球上の5分の1もの酸素を排出しています。その排出量は陸上植物全体の生産量に匹敵すると言われているのです。あなたが今吸いこんだ空気中にも珪藻が排出した酸素が含まれるかもしれません。

そして、いたるところに存在する珪藻。川や海はもちろん、畑や庭の土の中にいたり、時には風に乗って飛んでくることも。ご自宅に金魚やメダカを飼っている方は、水槽が茶色くなっているところをご覧ください。あの正体が珪藻です。

そんな身近で自然界においてなくてはならない存在である珪藻。

その珪藻の魅力をたくさんの人に伝えたい!と3名の研究者、出井雅彦、佐藤晋也、デイヴィッド・マンが結集して本書は書き上げられています。出井雅彦先生は日本珪藻学会の会長でいらっしゃり、40年間も珪藻研究に捧げていらっしゃいます。

珪藻愛に溢れるお三方が厳選した電子顕微鏡写真がふんだんに収められ、その多様なヴィジュアルだけでも大変魅力的なんですが、本書は珪藻にまつわる多様なトピックを網羅した大変読み応えのある解説が付いています。しかも、すべて日本語、英語、併記!気合入っています!

珪藻愛が溢れすぎ、当初の想定からページ数もあれよあれよと増えていき、全176ページの豪華本になりました。

謎多きミクロ生物、珪藻の知られざる「微」と「美」の世界に迫るビジュアルブック。全5章で構成された大変読み応えのある書籍です(Amazonで先行予約受付中ですので、是非お手に取ってください。
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序章) 珪藻について  Introduction to diatoms
1章) 形 ― 被殻・殻の多様性 Part I: Shape ― Diversity of frustules and valves
2章) 模様 ― 胞紋を拡大すると Part II: Pattern ― Detail within detail
3章) 結合 ― 細胞同士がつながる仕組み Part III: Connection ― How to be together?
4章) 突起 ― 複雑怪奇なパーツ Part IV: Processes ― Mysterious structures
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創元社ホームページ(驚異の珪藻世界 The Amazing World of Diatoms)

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荒俣宏さん書評「あなたが知らないウニの世界」

昨年10月に販売開始した「あなたが知らないウニの世界」

「荒俣ワンダー秘宝館」の仕事でご一緒した荒俣宏さんが本をとても気に入ってくださり、なんと書評を書いてくださいました!

これは私たちウサギノネドコにとっては大事件であり、夢のような出来事なんです!

何と言っても荒俣宏さんは10年をかけて、世界大博物図鑑全7冊をお1人で書き上げるという、博物界においての大偉業を成し遂げたお方です。(世界大博物図鑑をご存じない方は、「松岡正剛の千夜千冊」の記事が最高にエキサイティングで面白いので是非お読みください。)

(「世界大博物図鑑(別巻2)水生無脊椎動物」)

書評を書いていただいたことの興奮が収まりそうもありませんが…
荒俣さんによる「あなたが知らないウニの世界」の書評です。どうぞお読みください!

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本当に知らなかった棘の下の「驚異」
荒俣宏 2020.10.18
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 いま、生き物への関心が大きく変化してきたと感じているが、それを痛感する非常に美しい書物が刊行された。本の作りからして暗示的なのである。箱の一部をわざわざ切り取り、そこから書籍自体の表紙が覗ける仕掛けがしてある。箱には棘のあるウニが見えるのに、切り取られた「窓」からは、棘の下に隠されたウニの殻が覗くのだ。これがまた、動物の殻とは信じられぬくらいに幾何学的設計を守り抜いた結晶体なのである。

 生物としてのウニの形態にただならぬ関心を寄せた先駆者に、ドイツの博物学者エルンスト・ヘッケルがいる。彼はダーウィン進化論の熱烈な擁護者だったが、無脊椎動物への偏愛がいちじるしく、クラゲ、サンゴ、放散虫などの形態を研究しつづけた。なぜなら、内骨格を持つ脊椎動物を基準にした当時の分類学に飽き足らなかった彼が、無脊椎動物の分類に外骨格、すなわち外側の形態を手掛かりにする試みを思いついたからであった。
(ヘッケルによるウニの図版:荒俣ワンダー秘宝館にて展示)

 これでゲーテ以来の形態学に進展が生まれた。外側の形を問題にすることで、人間が「おはこ」にしていた美術という営為が、じつは生物全体、いや植物や鉱物を含む自然全体の造形と原理を同じくしているのではないかという仮説が生まれたのだ。

 この発想を深めるため、ヘッケルは元来画家を志望した事情もあって、生物の「芸術的な自然造形」という大きな博物版画集を刊行したのだった。当時この発想は欧州に支持者を得て、1900年のパリ万博の正門に放散虫の形がデザインされるなどの成果が表れた。

 でも、肝心の無脊椎動物の芸術的フォルムをしっかりと観察できる画集の発行は途絶え、ウニについてもその造形を開示する試みにはつながらなかった。

 しかし、21世紀になり、高度な写真術やデジタル技術が一般にも開放され、たとえばヘッケルが愛した極小の放散虫や、生体が得られなかった珍奇な刺胞動物などの形態を記録した写真が、わたしたちにも撮影できるようになった。その動きはここ十年間に一気にステージアップして、深海生物の驚くべきフォルムまでも美しい写真に収められるようになった。

 だが、真打ともいえるウニだけは、すこし特殊なのだ。ウニが内蔵する真の「芸術的造形」は、無脊椎動物のくせに棘ある表層の下に隠されていたのだった。これでは、われわれも気づけない。

 この本の著者、アシュリー・ミスケリー氏はそれを追究したのである。ウニが死んで外皮がなくなると顕われる殻は、まずその形態が芸術品だった。そのまま置いても美術品になるほどだ。また色彩も驚くほど鮮やかで、しかも光に当たっても色あせることがない。ヘッケルが生物は芸術すると直感したのも無理ではなかった。

 私は偶然にも、この本に掲載された南オーストラリアの海に潜ったことがあるが、冷たい海中は北半球とはまるで異なる花畑のように美麗な無脊椎の楽園だった。海底に散らばったウニを拾い、殻をむき出してみて、その鮮やかすぎる色彩デザインに度肝を抜かれた。そのオーストラリア産ウニの美品が、惜しげもなく表れる。しかも適切な解説があって、このグループが恐竜時代からすでに現在に近い形態を獲得していたことを知ることができた。

 私は本書のページをめくりながら考えた。たぶん生物の芸術的造形は、無脊椎動物への関心が高まることで、ヘッケルの時代に見られたのに近い魅惑を発散し出すにちがいない、と。

 地球環境が変化した今だからこそ重要な、見落とされてきた自然の術の再評価につながるだろう。

 ついでに、本書が教えてくれたことをもう一つ。「ブンブク」とか「タコノマクラ」とか、あるいは「スカシパン」と呼ばれるウニの一群がある。名前だけ妙におもしろいという印象しかなかったが、普通のウニに劣らない奇蹟的な形態を持つ生き物だと知った。この仲間はたいてい砂に潜っているが、こんど海へ行ったら、実物を探しだすぞ!

荒俣宏

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本書の魅力をエルンスト・ヘッケルと並べてご紹介いただきました。

書籍の販売開始した時点ではまだ荒俣宏さんとはお会いしていませんでしたが、頭の片隅で「荒俣宏さんの手に渡って、書評を書いてもらえたらなぁ…」という淡い夢を抱いておりました。それがまさか1年後の現在。お仕事をご一緒することになり、本当にそれが実現するとは…。

荒俣さんからさらなるサプライズを頂戴しました…。書籍の帯やPOPなどでも使えるようにと、なんと手書のコメントまでいただきました!


博物にまつわる世界中の書籍をご覧になっている荒俣さんに「家宝にします」とまでおっしゃっていただきました。なんたる光栄でしょう…。

是非、この書評をきっかけにさらに多くの方に書籍をお手にとっていただければと思います。

「あなたが知らないウニの世界」、ウサギノネドコオンラインストア、ウサギノネドコ京都店、東京店でお買い上げ頂けます。

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