ウサギノネドコ図鑑9 クマサカガイ

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小石や巻き貝をくっつけたクマサカガイ

まるで作り物のような貝、クマサカガイ

まるで貝殻や小石をボンドでくっつけあわせた工芸品のようなこちら。
実は「クマサカガイ」という巻き貝が、自分で貝殻や小石を付着させたものです。
クマサカガイは水深100m~300mくらいの海底の砂地に住む貝です。
長い口先を器用に動かして、付近の貝殻や小石を集めては自分の殻を飾り立てています。
個体によって付着させるものに好みがあるらしく、貝殻だけくっつける個体、小石だけをくっつける個体などがあるんだとか。

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「ダーウィンとフジツボ展」よりミョウガガイとクマサカガイ

2016年2月から5月までウサギノネドコ京都店で開催した、「ダーウィンとフジツボ展」では、「ミョウガガイ」というフジツボの一種をくっつけたクマサカガイが登場しました。
スタッフも初めてみたときは作り物?と思ったのですが、自然にできたものと知ってびっくり。
以来クマサカガイが気になって仕方なく、ついに仕入れてしまいました…。

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芳年武者无類より源牛若丸と熊坂長範

名前の由来は伝説の大盗賊

クマサカガイは、能や浄瑠璃に登場する平安時代の大盗賊、熊坂長範(くまさかちょうはん)から名付けられました。
その理由は他の貝から殻を奪い取っているからとも、盗賊の七つ道具や戦利品を背負っているように見えるからとも言われています。

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サンゴをくっつけたクマサカガイ

なぜ自分の殻に別の貝殻をくっつけるているの?

それではなぜ自分の殻に別の貝殻をくっつけるているのでしょうか?
はっきりした理由はわかっていませんが、3つの説が考えられています。

1. 外敵から見えないように、カモフラージュしているという説
2. 自分の殻が薄いので、他の貝がらで補強してといういる説
3. 泥に沈みにくくするために、かんじきのように貝を付着させているという説

いずれにしろ生存に有利な理由があるのでしょうが、それだけでは説明しきれない珍奇さがあります。

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ガラス海綿をくっつけたクマサカガイ

理想の宮殿を作っている?

クマサカガイを観察している中で、フランスの片田舎で奇想天外な宮殿を造り上げた、フェルディナン・シュヴァルという人を思い出しました。

[Palais Idéal du Facteur Cheval à Hauterives]
(郵便配達夫 シュヴァルの理想宮)

郵便配達夫のシュヴァルは、ある日奇妙な形をした石につまづきます。
その石に天啓を受け、ひとり黙々と石を拾い積み上げること33年、ついに自分の理想の宮殿を作り上げます。

クマサカガイもシュヴァルのように黙々と貝や小石を集めて、自分の理想の宮殿を作り上げているように思えてきませんか?
しかしその貝や小石が盗品とは悪い奴です。
海底で自分の理想宮を作り上げる大盗賊、クマサカガイのお話でした。

ミセスタッフ
高橋

■店舗のご案内
ウサギノネドコ京都店 (木曜定休)
[ミセ]11:00-18:30
[カフェ]11:30-22:00 (L.O.21:00)

ガラスに閉じ込められた美しい植物標本

ウサギノネドコ カフェおよびミセでガラス作家の
佐々木類さんの作品を常設展示させていただくことになりました。

瀬戸内国際芸術祭2013で粟島で展示されていた
Subtle Intimacyというガラス作品です。

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半年間にわたって佐々木さんが
粟島で採取された植物標本が作品の中には封入されています。

ガラス板の間に植物標本を挟み、
釜で700〜800度の熱で焼くことで作品を作っていらっしゃいます。

植物が白いのは灰になって残っているためです。

灰になることで植物の造形が際立ち、
後ろからLEDで照らした姿はおもわず「あぁ…」とため息が
出てしまうほど引き込まれます。

中にはガラスの中に気泡があって膨らんでいるものがありますが、
これは植物から出た水分によるものだそうです。

「土地の記憶を作品に込める」ことを佐々木さんは
作品作りにおいて大切にしていらっしゃり、
その土地、その時の水分までもが作品に残っているというのは
何かストーリーを感じますよね。

写真でも美しさが伝わるかと思いますが、
実物は得も言われぬ美しさです。

数えてみましたが全部で368種類の作品がありました。

カフェ、ミセいずれの空間でも展示しています。
それぞれの空間で異なる魅力を放っていますので、
その違いもどうぞお楽しみください。