ウサギノネドコ図鑑6 ヒカゲノカズラ

ヒカゲノカズラ

今日は「ウサギノネドコ」の名前の由来になった「ヒカゲノカズラ」という植物のお話です。

ヒカゲノカズラとは
ヒカゲノカズラは地面を這いながらつる状に伸びるシダ植物です。
成長すると茎の先端が二叉に分岐していき、地面に唐草模様を描きます。

漢字で書くと「日陰蔓」。
字面から暗い日陰に生えると思われるかもしれませんが、
実際には日当たりの良いところに生えます。
もともとの漢字は「日影葛」と書き、「日影」は日光、
「葛」はつる状の植物をあらわしていたようです。

有用植物としてのヒカゲノカズラ
庭のヒカゲノカズラ
庭のヒカゲノカズラ

ヒカゲノカズラは現在もいろいろな場所で利用されています。
料亭などで料理に添えられたり、
フラワーアレンジメントの材料として使われているのを
見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
以前お店にいらしたお客様からは、生ものを包む時のクッションとしても使われている、と伺いました。
また、胞子は石松子(せきしょうし)と呼ばれ、丸薬の衣として使われます。

ヒカゲノカズラの別名
ウサギノネドコのロゴマークとヒカゲノカズラのリース
ウサギノネドコのロゴマークとヒカゲノカズラのリース

ヒカゲノカズラはたくさんの別名を持っています。
わたしたちのお店の名前「ウサギノネドコ」もまた、ヒカゲノカズラの別名の一つです。
ほかにも、キツネノクビマキ、キツネノマクラ、キツネノタスキ、サルノタスキ、リュウノヒゲ、ムカデカズラ、オオカミノアシ、ヤマノカミサマノフンドシ、カミダスキ……などなど、地域によってたくさんの呼び名があります。
それだけ身近に親しまれてきた植物ということなのでしょうね。

ヒカゲノカズラと日本文化
蓬莱飾り
ウサギノネドコに飾った蓬莱飾り

ヒカゲノカズラは常緑で、茎を切ったあとも
長い間枯れずに鮮やかな緑色を保ちます。
そのことから、古くから生気が宿った清浄なものとして扱われていました。

ヒカゲノカズラは古事記や万葉集にも登場します。
天照大神(あまてらすおおかみ)が岩戸に隠れてしまう有名な場面で、
天宇受売命(あめのうずめのみこと)は胸もあらわに岩戸の前で舞い踊ります。
そのときに天宇受売命がたすき掛けにして身につけていたものがヒカゲノカズラです。

ヒカゲノカズラの別名の中に「タスキ」「クビマキ」「フンドシ」といった
名前が多く見られるのは、この故事にちなんでいるようです。

伏見稲荷大社
伏見稲荷大社

いまでも祭祀のときに、装身具としてヒカゲノカズラが使われることがあります。
伏見稲荷大社で毎年1月5日に行われる大山祭では、
祭礼を終えたあと、宮司と参列者がヒカゲノカズラを
首にかけて、稲荷山中の社を巡ります。
宮司さんがヒカゲノカズラを首にかけた様はまさに
「カミダスキ」「キツネノクビマキ」といった風情です。

上賀茂神社
上賀茂神社

お正月飾りや縁起物としてもヒカゲノカズラが使われます。
上賀茂神社では正月初卯の日に卯杖(うづえ)を奉る神事があります。
卯杖は、2本の木を束ねたものに紙垂などを挟み、
ヒカゲノカズラを飾った縁起物です。
この時期授与所では30cmほどの小さな卯杖を授与しています。
玄関や神棚に飾っておくと厄を除けてくれるそうです。

岡崎公園の八重桜

お出かけするにもぴったりの爽やかな季節です。
ウサギノネドコに寄ったあとは京都観光をして、
ヒカゲノカズラにちなんだ神社を
参拝するのも面白いかもしれませんね。

ミセスタッフ
高橋

■店舗のご案内
ウサギノネドコ京都店 (木曜定休)
[ミセ]11:00-18:30
[カフェ]11:30-22:00 (L.O.21:00)

ウサギノネドコ図鑑5 メニライト

和名:乳珪石
英名:Menilite

最近のウサギノネドコときたらウニや海綿動物から果てはフジツボなど、普段の生活ではまぁ馴染みのない生き物をたくさんかき集めているので、これも何かの変わった生き物かしらと案じた方もいらっしゃるやもしれません。

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が、こちらはれっきとした石でございます。
しかも宝石として有名な「オパール」の一種です。

通常オパールというと虹色にきらめくものを思い浮かべるかもしれませんが、実はオパールには大きく分けて2つの種類があります。
一つは「プレシャスオパール」というきらめきのあるタイプ。
そしてもう一つは「コモンオパール」といってきらめきのほとんどないタイプです。今回のメニライトはコモンオパールに属します。

プレシャスオパールは宝石として利用されることも多いので、目にしたことやご存知の方も多いかも知れませんが、メニライトのようなコモンオパールはあまり目にすることがないかと思います。
特にこのメニライトは2010年に発見され、流通しだして間もないということもあり実際にまだあまりメジャーなものとは言えないでしょう。

ところで、このぷってりした愛らしい形の石には小さな巻貝が埋まっていることがあります。

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小さな巻貝とその跡

そして、水中に生息する小さな藻類である珪藻を多く含む堆積岩の中で形成されるらしいのです。
つまり、水にすむ生き物が積もって出来た岩石中に形成され、しかも巻貝を伴って産出するということは、このメニライトは湖や海の底で長い年月をかけて堆積し、一つの形に押し固められた小さな生き物たちの集合体とも言えます。
このようなつくりをしているせいで、オパールというくくりにおいては「不純物を多く含むもの」という表現になってしまいがちです。
ですが、死んだのち新たに一つの形にまとまることでこのメニライトの特徴的な造形を生み出しているという風に考えると、かつて存在した生き物が形を変えて美しく存在しているということでもあります。
ウニやカイロウドウケツもそうですが、自然物の亡骸に美しさを感じるというのは、改めて考えるとなんとなく違和感を感じてしまいます。

ミセスタッフ
aoyama

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